満室経営を目指した賃貸経営計画を考える
石川龍明氏
株式会社横濱快適住環境研究所所長
賃貸経営リスクコンサルタント。建築会社やコンサルティング会社にて資産の有効活用を数多く手がけ、そこで蓄積されたノウハウを活かし、賃貸住宅のプロとして活躍中。
建築士・ファイナンシャルプランナー。
満室経営を目指すには、経営の考え方が大切です
よく賃貸住宅は「所有する(いわゆるモノ)」という言い方をされますが、これを「経営する(いわゆるコト)」という考えに変える必要があります。所有していれば家賃が入り、時とともに地価も上がっていくという時代ではありません。
お客さま(入居者)に、数多い賃貸住宅の中から選んでいただき、長く住んでもらうという発想が大切なのです。
下の図は、「安定経営」、「空室対策」、「満室対策」、「テナントリテンション対策」、「ウェイティング対策」。これらのために、必要な手法があることを表しています。
まずは、リサーチ。これは周辺にどのような物件があるのか、どのような暮らしの魅力があるのか、人口を構成する年代や性別、家族構成はどうなのかなど、徹底的にリサーチします。
これをベースにターゲットを設定。大きな公園や学校が充実しているのなら、ファミリー向けなど、立地に合わせたターゲットを考えます。
次にコンテツ。つまり、どのような物件のコンセプトを考えるかです。女性向けならセキュリティを重視する間取りの工夫や、収納の工夫など、ターゲットに合わせてプランニングを行います。
次がリーシング。つまり入居促進活動、入居者集めのための工夫です。せっかく内見にこられたお客さまを逃すことがないよう、物件内に特徴を示すポップを置いたり、周辺の利便施設の地図を記すチラシを渡すなど、積極的な営業戦略が必要です。
当然、物件の清掃は必要ですし、空き部屋特有の匂いも解消しておくなど、日頃のケアは常に行っておきましょう。
次にオペレーション。住んでいただいている方への対応です。例えば、最初の更新時にはオーナーさまからプレゼントが届く、4年目にはハウスクリーニングのプレゼントなど、入居者をお客さまとして考えるサービスを提供するなどの工夫をします。
成功しているオーナーさまの多くが、賃貸経営をサービス業だと考え、お客さまへ向けて、さまざまなサービスを提供しています。満室経営を目指すためには、ぜひこういった成功例を参考にしてください。
魅力的な物件をつくること。それが長期安定経営につながる
賃貸経営で最も大切なもの、それは商品である「賃貸住宅」です。周辺のライバル物件との差別化も必要ですし、価格競争も発生します。単に所有することが目的になってしまうと、この段階で大きな間違いをすることになりかねません。
「経営」として考えると、「誰に住んでもらい、どのように暮らしていただくか」を考えることが大切です。入居者の満足度で重要視されるのは、快適性でしょう。冬は暖かく、夏は涼しい断熱性能は、入居者が長く住みたいと思える魅力のひとつです。
その点では南極昭和基地を建てた実績のあるミサワホームの断熱性能は定評があるので、入居者も安心できるはずです。
さらに収納力も入居者が喜ぶポイント。ミサワホームの「蔵」収納などは、その点で入居者にとって大きな魅力でしょう。一度収納量の多い物件に住むと、次に同じような収納量の物件を見つけることはなかなか難しいので長期入居に繋がります。
このように、入居者にとって魅力的で、他にはない付加価値のある物件は、何年経っても入居者が集まりますし、退去する回数も少なくてすみます。商品力をしっかりと高めておくことを、予算が許す範囲で考えましょう。
※「蔵」は居室としての使用はできません
時代が大きく変化している今、土地活用のあり方も多様に
少子高齢化で人口減になると、賃貸住宅などの活用は厳しくなると考える人もいます。しかしそれは本当でしょうか?
よく持ち家派と賃貸派という企画が雑誌などで行われていますが、いつの時代も50対50です。常に賃貸住宅に暮らす人がいて、場所と家賃が適正で商品力のある物件は常時満室。これはどの時代においても変わっていません。
また賃貸住宅以外に、民泊事業など、一日やウィークで貸す方法も選択することができます。
また、インターネットの普及で働き方も大きく変わっており、自宅で働く人も増えています。さらに言うと、会社に行かなくても自宅でできる仕事の場合、どんな場所に住んでいても構わないという方もでてきます。今まで賃貸住宅に向かなかった郊外、駅から遠いという立地でも、環境が良かったり、眺望が良いという理由で賃貸経営が成り立つ可能性もあります。
入居者をお客さまとして考えるサービスの基本は、これからも変わりません。しかし商品自体は時代とともに変わっていきます。ですから、賃貸住宅経営にはまだまだ大きな可能性があるのです。