増税時代に備えるには資産の評価減がポイント
清田幸弘氏
ランドマーク税理士法人 代表社員 税理士
資産税専門の会計事務所勤務の後、清田幸弘税理士事務所設立。その後、ランドマーク税理士法人に組織変更し、現在12支店で精力的に活動中。
相続税、消費税・・・。これからの増税と税制特例を把握する
2015年の相続税制改正後、「相続税はお金持ちが支払うもの」という考えが通用しなくなり、誰もが身近な税金となりつつあります。下のグラフのように、相続税発生件数も増加しています。
相続税制に関しては、今後どのように向かっていくのかは不透明ですが、資産格差が問題となっているなか、増税傾向が続くと考える方が自然でしょう。
また、消費税増税も今後の資産活用に大きな影響があります。世の中の景気が鈍化するというリスクです。景気が悪くなれば、入居者は家賃などの支出を抑えようとする可能性がありますし、地価の下落により資産が目減りする可能性もあります。
国は景気の低迷を防ぐために、増税を実施する際には税制特例を用意しています。
住宅関連でいえば、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税限度額が最大3000万円に、また住宅ローン控除が3年間延長され、13年間になる等の特例が用意されていますので、把握しておくことが大切です。
生前に子へ資産を移す、つまりは贈与の活用が効果的
相続税対策の方法の一つとして、生きているうちに資産を子に譲る、いわゆる贈与があります。住宅資金等の贈与の非課税枠や、教育資金の一括贈与非課税制度、結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度など、さまざまな贈与に関する特例が設けられています。
また、「暦年贈与」も利用価値が大きい制度です。一人当たり年間110万円の非課税贈与枠を活用して何人にでも何年間でも贈与することができます。
例えば、子、孫など10人に毎年贈与するとしたら、年間1100万円。10年で1億円以上の資産を子や孫などに移すことができます。
贈与は資産を減らす効果はもちろん、子や孫に喜んでもらえることも大きなポイントです。
資産の評価減には評価差額を使う。賃貸経営は今後も有力な相続対策
賃貸住宅の建築が相続税対策になるということは、多くの方がご存知だと思います。その仕組みはシンプルで、資産の評価額の違い、つまり評価差額を利用するということです。
例えば、現金で持っていた場合の評価額を100%とすると、賃貸住宅を建築した場合、建物の「相続税評価額」は各市区町村役場や都税事務所の税務課が評価していますが、これは建築価格の50%〜60%程度で設定されています。つまり、現金を使って建物を建てることは、財産の評価額を下げて相続税額を減少させることにつながります。
次に、所有する土地について考えてみましょう。土地を更地のままにしておくと、評価額は路線価に準じます。しかし、そこに賃貸住宅を建てると評価額を大きく下げることができます。賃貸住宅を建てると貸家建付地の評価額になり、更地としての評価額から一定割合で評価額が減額されることになります。地域にもよりますが、おおよそ8割程度の評価額となります。さらに小規模宅地等の特例が利用できる場合には、貸家建付地の評価減との併用で実質6割程度の減額となるケースもあります。
より厳しくなる相続。プロのアドバイスが必要
相続の問題は、相続税だけではありません。複数の相続人がいる場合、どのようにして分けるかという、遺産分割対策も必要です。
これには家族での話し合いが不可欠となります。生前にどのように分けるのかをはっきりしておくことで、相続による家族の争いを防ぐことができます。
そして、できるだけ良い形で資産を残すことが大切です。相続したものの、使い道がないようでは、負の遺産になってしまうことも考えられます。
活用できる土地は、しっかり収入を生み出す物件にしておく。賃貸などの活用に向かない土地は、買い替えを行い、収益物件にするのも一つの方法です。
大きく時代が変わろうとしている今、資産を有効に活用し、守り、育てていくには、プロのしっかりしたアドバイスが必要です。オーナーさまの目線で、自分に合ったアドバイスをしてくれるパートナーを見つけましょう。
そのためにも、オーナーさまが知識を身につけておくことが大切です。不動産に関する相続対策のセミナーなど、ぜひ積極的に参加してみましょう。