交通量の多い国道沿いにあって、一際目を引く切妻の大屋根。市街化調整地域であるため周囲に住宅は少ないが、開業以来1日平均70人の患者で連日大忙しだ。以前の勤務地から離れた場所でのいわゆる"落下傘型開業"の場合、しばらくは患者の確保にも苦労するというのが一般的だが、同クリニックは自身の予想を超える順調な立ち上がりとなった。出身地の九州を離れて大学入学以来、三重県で過ごしてきた有馬院長が「私を育ててくれた三重県に、地域医療を通じて恩返ししたい」という想いを込めて開業した医院。
開業支援セミナーで何気なく立ち寄ったミサワホームのブース。三重県での地域医療に尽くしたいという想いを語りつつ「土地情報はあるだろうか」と相談したのがきっかけだった。それに応えてミサワホームは、すぐに候補地を複数件ピックアップし、現地までご案内した。このスピーディーな対応が開業を考えていた有馬院長の背中を押したことは間違いないだろう。
建築DATA | ||||
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敷地面積 |
1327m2 (401坪) | 延床面積 |
296m2 (89坪) | |
構造・規模 | 鉄骨造 2階建 | 開設 | 2011年 |
プランニングに際しては、経験豊富なミサワホームに一任。そのポイントは2点ある。ひとつは「患者さんへの心遣い」だ。例えばトイレが中央部にあるのは、待合室からすぐに利用できるようにしたため。視線が気にならないよう、入り口前にはカーテンを設置。また、明るく開放的な待合室にするため、天井から床までの大きな掃き出し窓を採用した。間接照明で柔らかな雰囲気を演出している。
「中待合」を置いたのも、患者さんへの配慮。これがあることで待ち時間が短く感じられ、中で上着を脱ぐなどの準備も落ち着いてできる。それは結果的に回転率の向上につながるため、経営的なメリットも得られるわけだ。
もうひとつのポイントは「診療科目増への対応」である。実は院長の奥様は小児科の医師であり、将来は副院長として共に診療を行う予定だ。その時に備えて、あらかじめ、待合室、診察室とも小児科専用のスペースを用意した。もちろんこども用のトイレもある。そして耳鼻咽喉科と小児科のスペースが患者さんにも自然に区別できるよう、床材を変えたり壁の色を変えたりと、視覚的な配慮を行っている。さらにはレイアウト変更が容易にできるようにと、間仕切りをパーテーションとした。視覚的に区分けしつつも空間的には一体感を持たせるという、絶妙なバランスが実現できた。