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トップ - HomeClub特集 / ライフスタイルを考える - 子どもの感性や創造性を伸ばし安心して子育てができる社会へ

Special Interview

子どもの感性や創造性を伸ばし
安心して子育てができる社会へ

#子育て住宅

子どもの持続的で明るい未来のためのデザインを表彰し、広く世に発信するキッズデザイン賞。
その意義や展望などを、第1回から審査に携わり続けている益田文和さんにうかがった。

キッズデザイン賞とは

子どもの明るい未来を拓くすぐれたデザインを顕彰
子どもや子育てに関わる社会課題の解決に取り組むすぐれた作品を顕彰する制度。特定非営利活動法人キッズデザイン協議会の主催によって2007年にスタート。「意匠」などの狭義のデザインだけではなく、「制度」や「取り組み」などの広義のデザインまで含めたものを評価し、製品・サービス・空間・活動・研究など、幅広い分野を対象としている。

子どもの未来を拓くデザインを

―― キッズデザイン賞は今年で15回目となりました。どのような背景のもとで創設されたのか、教えていただけますか。

益田 都市環境が整備され、モノが豊かになるなかで、子どもの事故が増加している状況がありました。原因の一つは子どもの視点に立ってデザインされたモノが少なかったことです。当時、子どもの目線の高さでカメラを持って街を歩くという実験をしたことがあります。すると、ガードレールが子どもにとって目隠しになっていたことがわかりました。これではその先にある交差点の危険を察知できません。安全のためにつくったはずなのに、子どもにはむしろ危険なモノになっていたのです。

―― 子どもの安全・安心に貢献できるデザインが必要ということでしょうか。

益田 安全・安心だけでなく、子どもたちの創造性や感受性を育むことや、子どもを産み育てやすい環境も大切です。この3つの「デザインミッション」を果たしていることが、キッズデザイン賞の審査のポイントになっています。

―― 単に見た目のデザインを競う賞ではないのですね。

益田 実際、はじめの頃は、子ども用品をデザインする賞だと誤解した応募作もありました。たとえば、女の子用がピンク、男の子用をブルーの色にした文房具などは、子どもが欲しがるモノをデザインしようという狙いだと思いますが、それは賞の意図とは異なりますし、ジェンダー意識という観点からもふさわしくないですよね。

―― むしろ、そうした古い価値観を変えていくことが賞の意義に即しているといえそうです。

益田 まず、大人が気づくことが大切です。そうした意識でつくられた製品を使うことで、それが子どもの意識を高め、やがて大人になったときに、今度は自分がそうした製品をつくる。そんな循環が生まれて欲しいし、その循環はまさに文化といえるものです。

子どもは「未来」そのもの

―― 益田さんは応募企業に向けたメッセージで、「子どもは未来そのもの」とおっしゃっています。

益田 第1回のときに6歳だった子どもが、今年はもう成人しています。つまり子どものためのデザインというのは、実は次の時代の大人のためのものでもあるのです。

―― そうしたメッセージが込められた製品が身の回りにたくさんあれば、子どもの意識は自然と変わっていきそうです。

益田 キッズデザイン賞における「子ども」は、自分の子どもだけを指す言葉ではありません。日本の子どもに限っているわけでもありません。世界中のものすごい数の子どもたちのことを考えるべきだと思っています。たとえば、家電製品。便利だけど、動かす電気はどこでつくられているのか。そのための燃料はどこから来て、それが地球環境にどんな影響を与えているのか。その製品を使うことが他国の環境を破壊して、そこで暮らす子どもたちのリスクになったりしてはならないのです。

―― 受賞した製品を使うことが誇りになり、そうした意識を持つための親子のコミュニケーションのきっかけにもなりますね。

益田 日本の子どものためのものが、世界の子どもの犠牲の上に成り立っているとしたら、それはとても不幸なことです。親は、その負の遺産を自分の子どもに背負わせない意識を持つべきだと思います。

―― キッズデザイン賞のこれからの展望についてお聞かせください。

益田 子どもの視点に立ったデザインの顕彰制度は、実は世界ではとても珍しいのです。今後は世界に広げていけたらと思います。子どもの視点に立った製品をデザインして、それがきちんとビジネスになること。それが地球規模の大きなフレームの取り組みになったら、本当に素晴らしいと思います。

―― 明るい未来が期待できますね。本日はありがとうございました。

インダストリアルデザイナー
オープンハウス 代表取締役
益田文和

ますだ・ふみかず 1949年東京都生まれ。インダストリアルデザイナーとしてさまざまな製品のデザイン開発を手掛けながら、地域産業のデザイン振興などの国内外のプロジェクトに関わる。グッドデザイン賞審査委員、公益財団法人日本デザイン振興会理事などを歴任。2021年8月現在、名古屋学芸大学及び金沢美術工芸大学客員教授、キッズデザイン賞審査委員長、環境省グッドライフアワード実行委員長、IAUD国際デザイン賞審査副委員長、ウッドデザイン賞審査委員(木製分野長)などを務める。JDCA(日本デザインコンサルタント協会)副代表理事。