ミサワホーム総合研究所と国士舘大学は、南極・昭和基地で46年間運用された「地学棟」の木質接着複合パネル(以下、木質パネル)の耐久性調査を実施し、すべての試験項目で構造部材としての強度の基準値〔※平成12年建設省告示第1452号に規定される基準強度。JAS(日本農林規格)構造用合板の基準値〕を上回る高い耐久性を保持していることを実証した。最低気温マイナス45℃、最大瞬間風速60㍍/s前後という極限環境に耐え抜いたこの成果は、ミサワホーム独自の木質パネル技術の信頼性を改めて科学的に裏付けたといえる。

調査対象となった「地学棟」は1978年に建設され、2024年の解体まで昭和基地の観測活動を支えてきた高床式の木質パネル構造の建物。同棟の外壁仕上げは、後年の標準仕様である表面鋼板による補強がなく、構造用合板に油性調合ペイントを施しただけの「露出仕様」であり、木質パネル自体の耐久性が直接試される極めて過酷な条件下にあった。今回、国内に持ち帰られた木質パネル(壁パネル2枚、床パネル1枚)から試験体を採取し、JIS(日本産業規格)およびJAS(日本農林規格)に基づく4種類の材料強度・接着強度試験が実施された。
試験の結果、芯材の圧縮・曲げ、合板の曲げ、および合板と芯材間の接着強度の全てにおいて、長期間運用後も有意な性能低下は認められず、強度の基準値を大きく上回る強度を維持していた。
特筆すべきは、木質パネルの接着性能で、格子状の芯材と表面の合板を接着剤で強固に一体化させる「ストレススキン効果」を発揮。また接着層の剥離ではなく木材自体が破壊される割合を示す「木部破断率」は86.4%~94.5%と極めて高い数値を示し、半世紀近くを経ても木質パネルが構造体として健全な状態を保っていたことが科学的に裏付けられた。
過酷な環境下で良好な状態を維持できた背景として、昭和基地における「配置計画」の重要性も浮き彫りになった。建物密集地ではブリザードの後に雪の吹き溜まり(スノードリフト)が発生しやすく、融雪水によって木質パネルが水分に晒されるリスクが高まる。しかし地学棟は主要部から離れた場所に配置されていたため、雪の吹き溜まりが発生しにくく、高床式による床下の通風確保も容易であった。適切な配置計画と建物形状の工夫が、融雪水の影響を軽減し、超長期の耐久性を支えた形だ。
今回の共同研究は、国立極地研究所が実施する「令和7年度一般共同研究」に採択され、同制度の枠組みを活用して実施された。研究を主導した国士舘大学理工学部の小久保彰准教授は、「学術界と産業界の連携により南極建築の持続可能性を検証できた意義は大きい。本研究の知見は、今後の南極観測拠点の整備のみならず、国内の建築物の長寿命化や持続可能な建築技術の発展に大きく寄与する」と評価している。


