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トップ - THINK LIFE / ライフスタイルを考える - 読書と脳の話を知ると、もっと本を読みたくなる

interview

読書と脳の話を知ると、
もっと本を読みたくなる

脳科学者 
毛内 拡さん

ついついスマホを見てしまい、
本から遠ざかりがち。
でも、読書が脳に及ぼす影響を知ると、
もっと本を読みたくなる。
毛内さんに読書の深い魅力を聞いた

  • 本を読みづらい時代です
    スマホをはじめとしたデジタルメディアは人間の能力を拡張してくれるので、使い方によっては有用です。でも、使い過ぎには注意が必要ですね。たとえば、SNSなどの短い動画を次々と見ていると、「次はもっとおもしろいかもしれない」という期待が生まれ、視聴を続けやすくなります。そこには、報酬への期待や行動の学習に関わるドーパミン系も関係すると考えられています。そういう状況ですから、本を読むよりも、ついついスマホを見てしまいがちになりますね。

    情報が多すぎると、考えがまとまりにくくなる
    現代の社会は、「情報の氾濫」により、脳は常に忙しい状態を強いられています。スマホの通知や画像、動画によって注意が繰り返し切り替わると、一つのことに集中し続けにくくなります。いわば、私たちの注意が外から次々と奪われている状態です。このインタビューでは、こうした「頭がうまく働かない」「考えがまとまりにくい」と感じる状態を、わかりやすく「脳疲労」と呼びます。
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  • 心地よい安らぎを感じる
    読書が気分転換になり、ストレスを感じたあとの回復を助ける可能性を示した研究があります。外から次々と届く情報から少し離れ、一つの文章に自分のペースで向き合うことが、心を落ち着かせる時間になるのでしょう。読書に没入し、外部からのストレス「情報過多」から解放されることで心が休まり、心地よい安らぎを感じることができるのです。また、その心地よい安らぎは、本の内容だけでなく、自分で読む速度を選び、必要なところで立ち止まれることから生まれるのかもしれません。

    睡眠前の読書はおすすめです
    読書を続けていると、心拍数や呼吸数が自然に落ち着くのを感じる方が多いと思います。眠くなる方もいますね。就寝前に本を読む習慣が、眠りへの切り替えや、主観的な睡眠の質を助ける可能性を示した研究もあります。毎日一行でもよいので、本を開く時間をつくるのもよいでしょう。本を読むことが目的なので「情報収集をしなければ」などと思わなくていい。その一行に向き合う時間が、脳を休めることになります。
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  • 読書では、複数の処理が協調する
    私たちが本を読むときに、目から入る情報だけではなくて、ひらがなは音として感じていますし、紙やインクの匂い、手触りなど、いろいろな脳の領域が協調して活性化しています。そうすることで、自分の力で世界を構築し、深く意味を掘り下げています。読書では、文字の形を見分け、音や意味へ変換し、情景や人物の気持ちを想像するなど、複数の処理が協調しているのです。

    読書を習慣に
    さらに脳には可塑性(学習や経験によって機能や構造が変化する性質)があります。読書を重ねることは、語彙や知識を増やし、複雑な文章を読み解く経験を積むことにつながります。こうした経験の積み重ねによって、読める文章の幅や、考えられる問題の範囲も広がっていくでしょう。

    日本語を読むことの意味
    日本語は、漢字という表意文字と、ひらがな・カタカナという表音文字からなる稀有な言語です。そして、日本語は、漢字とひらがな・カタカナを組み合わせて読みます。漢字と仮名では、文字から音や意味へ至る過程に違いがあり、脳内でも一部異なる処理が関わると考えられています。この複数の文字体系を行き来できることも、日本語を読むおもしろさの一つです。
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  • AI時代にこそ本を読む力を
    デジタル環境では、短い情報を次々と拾う読み方が増えています。しかし、これからはAIリテラシーが重要になります。AIを使うには、プロンプトという指示を的確に書く必要がありますし、その回答に対する読解力が必要です。AI時代にこそ、本を読む力‥‥深い思考が必要になってきますね。

    子どもたちを読書好きに
    子どもたちが「自主的に本を選ぶ」というのは難しいと思います。そこは大人の役割です。幼少期の読み聞かせや蔵書がある環境は大事ですね。僕は、週末には子どもと図書館に行ったり、お土産に本を買ってきたり、読み聞かせしながら「ここはどう思う」などと問いかけてみたり、コミュニケーションのツールとして楽しんできました。読書が楽しい体験として残るようにしてきたので、子どもたちも本に親しんでいますね。
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  • 自分の考えを振り返る時間を
    大量の情報に触れ続けていると、他人の行動や流行に注意を向ける時間が増え、自分の考えを振り返る時間が少なくなりがちです。読書を通じて、自分の速度で考え、自分が何を感じているのかを確かめる。その時間が、自己理解や、精神的な余白を取り戻す手がかりになることがあります。

    読書を楽しみながら、生きていきたい
    僕はSF小説をよく読むのですが、自分が生きられない遠い未来を想像すると、ワクワクします。読書は深い集中力を必要としますが、だからこそ自分で考えたり、想像する楽しみがあります。外からの評価は状況によって変わりますが、好奇心や、知ることそのものの楽しさは、読書を続ける大きな動機になります。僕らはやっぱり内的報酬のために生きていきたいですね。

    撮影:「GENIUS 彩日の家」 練馬展示場(東京都練馬区)
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profile

毛内 拡さん写真
毛内 拡さん
脳科学者・神経科学者。お茶の水女子大学ヒューマンライフサイエンス研究所助教、理学部生物学科。博士(理学)。専門は神経生理学、生物物理学。1984年、北海道函館市生まれ。2008年、東京薬科大学生命科学部卒業。2013年、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員などを経て2018年より現職。著書は『脳を司る「脳」』『読書する脳』など多数。

関連サイト
お茶の水女子大学 毛内研究室 公式サイト

information

読書する脳
「最近、集中力が続かない」「スマホばかり見て、脳が疲れている気がする」。情報過多とデジタル化の波によって、脳は常に疲れています。そんな時代に読書だけが、私たちにもたらす魅力的な変化を、脳科学の視点から解き明かす。本書を読むと、読書をしたくなる、読書を習慣にしたくなる。出版社/SBクリエイティブ (2025/11/7発売)