

トップ - HomeClub特集 / 住まいのイメージをふくらませる - 子どもにやさしい住まい
2026.09.01
近年の日本の住宅は、都市部を中心にコンパクト化が進み、子ども部屋の床面積も縮小傾向にある。また、タブレットなどを活用したデジタル学習の普及により、リビング学習が定着し、子ども部屋で勉強するスタイル自体が変化してきた。こうした住環境の変化が進む中、以前から子ども部屋は3畳弱程度で必要十分と提唱する建築家がいる。設計士の育成にも尽力している一級建築士、飯塚豊氏だ。「子ども部屋に必要な広さは、シングルベッドが置けて、個室で集中して勉強するための机や、自分の好きなモノを飾れる小さな収納を置ける程度で十分。それが3畳弱という広さです。子どもにとって大切なのは、広さではなく、自分だけのテリトリーを持つこと。身体的・精神的な安心感を確保するために縄張りをつくるのは、動物本来の習性です。人間であっても、大人でも子どもでも、それは変わりません」
子ども部屋がコンパクトになった分、パブリック空間を充実させることができる。リビングの快適性が高まれば、子どもが自室に閉じこもるのを防ぐことにもつながる。パブリック空間の快適性を高める具体的な方法のひとつが、空間に上下方向の変化をつけること。「天井は高いほど開放感が味わえ、低いと落ち着いた気持ちになれます。高さに変化がある空間構成は、場所ごとに気分を変えられ、暮らしに心地よいリズムをつくります」
空間内に"抜け"をつくることも秘訣のひとつだ。
「間仕切り壁を減らして、建物の端から端まで一直線に見通せる視線の抜けをつくると、空間が実際以上に広く感じられます」
こうした空間構成に加え、家族一人ひとりが快適に過ごせる居場所をつくることも重要だ。
「みんなが一緒にいて快適なことも必要ですが、一人ひとりが適度な距離感を保てる居場所も大切です。たとえばヌック。全方位が見渡せて、なおかつ自分が守られている気分でこもれるヌックのような空間は、人間がもっとも安心していられる環境です」
親と子どもが程よい距離感を保てることも、心地よい居場所づくりのポイントのひとつ。距離感が異なる複数の居場所を設ければ、そのときの気分に合わせて選ぶこともできるようになる。
「最小限のプライベートスペースを確保しながら、各所に心地よい居場所を設けること。そんな住まいなら、家族がお互いの気配を感じる程よい距離感や心地よいコミュニケーションを生み出してくれるでしょう」
時代とともに住環境が大きく変わりつつある今、飯塚氏は「これからの住まいづくりは、従来の価値にとらわれずに取り組むことが大切」と語る。自分にとっての本当の心地よさを追求することが、子育て世代の住まいづくりには重要と言えそうだ。
高天井や勾配天井、スキップフロアなどを駆使して、視線の抜けがある豊かなパブリック空間を実現。 パブリック空間に設けた子どもの遊びのスペースや、リビングとゆるやかにつながるスキップフロアなども、子どもが親との程よい距離感を保ちながら心地よく過ごせる空間になる。

1966年東京生まれ。一級建築士。
株式会社アイプラスアイ設計事務所代表。2011〜2025年、法政大学デザイン工学部「構法スタジオ」兼任講師。
デザインと性能が両立した木造住宅の設計に定評があり、「エコハウス大賞」など住宅関連の賞を多数受賞。著書に『間取りの方程式』『ぜんぶ絵でわかる木造住宅』(共にエクスナレッジ)など。