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トップ - HomeClub特集 / 住まいの計画を立てる - 方向性の羅針盤を共有しながらデザインでよりよい未来を創る

Special Session

方向性の羅針盤を共有しながらデザインでよりよい未来を創る

#デザイナーズ住宅

日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みとして65年以上にわたって「Gマーク」とともに親しまれているグッドデザイン賞。
その審査委員長を務めているクリエイターの 齋藤精一さん(写真右)とミサワホーム商品開発部のチーフデザイナー 仁木政揮さん(写真左)に
デザインの持つ力や役割、そして未来について語り合っていただきました。

"グッド"なデザインとは?

――お二人にとって、そもそも「グッドなデザイン」とは何なのでしょうか。

斎藤 ひと言でいえば、「今あるものをさらに良くすることができるデザイン」です。ご質問には「グッド」がついていますが、もともとデザインとは、複雑なものを単純化したり、見えなかったものを見えるようにすることで、世の中をより良くするもの。私はそう考えています。

――見た目だけを整えるものではないということですね。

斎藤 デザインという言葉の意味には、そのものが生み出された背景やプロセスなども含まれています。特に近年の日本では、ソーシャルアクションやソーシャルデザインといった、社会の仕組みづくりも含めて幅広く解釈されています。それはデザイン本来のあるべき姿といえるでしょう。

仁木 カッコいいものや美しいものが良いデザインといわれがちですが、それは本質ではありませんよね。手にした人に自然と行動を促し、それが社会の課題解決につながっていく。そんな「モノ」と「コト」の関係性を構築していくことがデザインの本質であり、役割なのではないでしょうか。

斎藤 そこはすごく大事ですよね。おっしゃるような「関係性」もそうですが、ものづくりをするうえで、異なる役割を担う人や企業、行政などを、価値観やルールの違いを超えてつなぐという、そんな関係性を構築することもデザインの力です。

――ライフスタイルの多様化が進んでいます。その状況は、デザインの現場にも影響しているのでしょうか。

仁木 多様化しすぎて、マーケティングだけで商品をつくるのが難しくなっています。今は市場動向を踏まえたうえで、最終的にはつくり手がつくりたいと思うものをデザインする方が、共感を生むものになるのではないかと思います。

斎藤 企画書の上で議論を重ねているだけじゃわからないことがあるんですよね。とにかく一回つくってみる。前例を打破して一歩踏み出す。そんな勇気がデザイナーには必要な時代です。

勇気と有機のあるデザイン

――2024年度のグッドデザイン賞のテーマも「勇気と有機のあるデザイン」ですね。テーマの狙いを改めて教えていただけますか。

斎藤 デザインに関わる人が、勇気を持って挑戦することが大切であり、そのアクションは賞賛されるべきです。先ほどもデザインとは「つなげること」といいましたが、そうした個々のアクションや考え方が有機的につながった体制によって、社会をより良くするアイデアを実現していって欲しい。毎年、いろいろな捉え方ができるテーマを決めていますが、今年のテーマにはそんな想いが込められています。

――応募する側としてはテーマをどう受け止められましたか。

仁木 私たちデザイナーに対するエールだと感じました。そしてこれからの企業にとって、難しいけれど、実践していかなければならないメッセージだとも思いました。

二極化する市場に向けて

斎藤 これは個人的な考え方ですが、以前のような消費動向を追う時代から、消費者をけん引する時代に変わっているんじゃないでしょうか。消費者という言葉はあまり使いたくないんですが......。各企業が、どんなビジョンを持ち、何をつくるのかを明確にし、そこに共感するお客さまがついていくという時代。かつては大量生産、大量消費で、より多くの人たちに当てはまる商品をつくる企業が勝てる時代でしたが、今はそれも変わってきています。

仁木 そうですね。一方で、何をしたいのか、自分にとって何が大切なのかが、とても明確なお客さまも増えています。

斎藤 そうなると、いわゆる贅を尽くした一品ものみたいな注文住宅をつくりたい人が増えているのではないかと思います。これは以前から個人的に聞いてみたいと思っていたことですが、ある程度モジュール化することで品質の高い住まいを大量に供給してきた住宅メーカーにとって、一邸ごとに要望に応えていくという状況はなかなか大変じゃないかと思います。そこはどのようにお考えになっていますか。

仁木 私たちが感じているのは、二極化が進んでいるということです。お金をかけて、とことんこだわりたいというお客さまがいらっしゃる一方で、品質は重視したいけれど、仕様の一つひとつを決めることに時間をとられたくないので、ある程度お任せしたいというお客さまも多いんです。弊社では、どちらにも対応できる体制を整えています。「企画住宅」もその一環として開発したものです。

――それぞれで培った技術やノウハウが、相互にフィードバックし合うこともあるのですか。

仁木 積極的に行っています。たとえば「企画住宅」では、職人不足や環境問題といった社会課題に応えるための省施工性や、環境性能をはじめ高い耐震性や耐久性などを実現する最新の技術などが採用されており、棟数を多くつくることで、高い品質はさらに磨かれ、安定させるためのノウハウも進化します。それらはこだわりを反映した住まいづくりにも活かされるんです。そうした一品もので磨いた技や新しい技術については量産化に取り組み、より多くのお客さまの手が届く「企画住宅」へとフィードバックされます。加えて、こうしたハード面だけでなく、デザイナーの育成といったソフト面にも注力しています。

斎藤 それはすばらしいですね。おそらく生産ラインなどにも今までとは違う工夫が必要になると思いますが、人材育成も含め、その仕組みづくり自体が一つのデザインといえますね。

これからのデザイン

――最後になりますが、未来に向けて、デザインはどうあるべきかをお聞かせください。

斎藤 繰り返しになりますが、使う人が自分の能力を発動できるデザインが大事だと考えています。たとえばサステナビリティもサーキュラリティも、今はつくり手側 だけが実現しようとし、受け手側はただ無関心に使うという構図になっていますが、その在り方はもはや限界です。私が消費者という言葉を使いたくないのも、そんな構図を肯定しているように思える からです。これからは、つくる側と受ける側が同じ方向を向き、どちら側にも「自分には世界を変える力がある」と信じられる状態があることが大切です。それをつくり出す力が、これからのデザイン には必要となるはずです。

仁木 おっしゃるとおりだと思います。特に住宅は、長い期間にわたって使うもの。永く愛着を持って使い続けられることはもちろん、次の使い手にもしっかりと継承され、愛されていくデザインであることも大切です。

――本日は、貴重なお話をありがとうございました。

※資源や価値を循環させること。その能力。