interview
家族でケアを続けて
100年生きる観葉植物に
園芸家
川原 伸晃さん
観葉植物をよみがえらせる
プランツケアサービスを提供する
「REN」の代表・川原さんに、
観葉植物のケアの考え方や
育てていく魅力について聞いた
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- 観葉植物は100年生きる
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「控えめに言って100年です」って言うんですけど、別に100年では終わりではないですし、海外では盆栽のように観葉植物を育てて、樹齢が1000年という例があるんです。観葉植物は、やるべきことをやれば長生きします。「観葉植物は数年で枯れる」という多くの方が持っている誤解は、正しいケアがなされていなかったからです。
地球の一部を借りてくる
観葉植物のケアは「地球の一部を借りている」という考え方がフィットします。地球の一部が、たまたま家にいてくれるという感覚で捉えるのがいいですね。光や風や水、土を、できるだけ森で起きているのと同じような状況にしていく。なんとなく育てるのではなく、地球の一部と考えると「ケアすることは、いろいろありそうだ」と考え方が変わると思うんですよね。
土を変えることが大切です
街なかの園芸店などで観葉植物を買ったときに、その多くの土には有機物が含まれていないので、生命力にストップがかかった状態なんです。そこに自然由来の腐植土を足してあげたいですね。有機物の塊である腐植が「肥沃」な用土となり、微生物が腐植を分解することで、植物が養分を吸収できる状態に変化します。光や風や水は自宅で整えられますが、土はあらかじめ変えることが大切です。
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- 本当はケアしたい
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世の中のいちばん上に合理性があるような時代です。「お手入れがラクな植物がいいです」とおっしゃる方がいます。しかし、その方に「どうして、植物が欲しいんですか」と聞いていくと、どこかで「本当はケアしたい」という気持ちが出てきます。
ケアすることで満たされていく
哲学者の広井良典さんは「人間は本能的にケアしたい欲求を抱えている」と言っています。僕らは、本当はおせっかいしたい、ケアしたいんです。観葉植物は、実もならないし、花も咲かない、季節を人に教えてみたいなこともない‥‥役に立たない。タイパもコスパも良くないんです。でも、観葉植物である以上、なにもしないと途絶えてしまう。だからこそ、ケアをしたくなりますし、ケアをすることで僕たちは満たされていきます。
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- 毎日、葉っぱを触ってみる
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人と人は「おはよう」と挨拶することで、関係性が変わります。そこから、コミュニケーションが始まっていきますし、その人への気づかいが生まれてきます。それと同じで、葉っぱに触ることで、観葉植物へのケアや気づかいが発生するんです。「張りがないのかな」、「よく見たら虫がいる」、「土が乾いている」みたいなことに気づいて、次々とケアが駆動されていきます。そして、ケアすることで癒されていきます。
子どももお世話しています
5歳の子どもに観葉植物の管理を任せています。子どもも葉っぱを触っていますね。具合が悪くなると「葉っぱさん、ごめんね」となったり、状態が良くなると子どもも元気になったりします。そして、そんな子どもを見ていると、僕自身も元気になりますね。
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- そこに、いるだけでいい
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観葉植物の"役に立たない"に対する愛着は、子どもの情操教育にすごくいいと思っています。配偶者に、"機能"を求めるという話はよくありますよね。夫が家事や子育てしてくれない、逆も然りですね。でも、家族は役に立ちあうとかではなくて「いてほしい、いたい。そこに、いるだけでいい」いうのが、とても重要な要素です。
子どもへの暗喩になる
何もしないはずの観葉植物が、なにかしらの引力を持ってしまう、どうしようもなく愛おしい。それは、子どもにとって「君の存在そのものが大事なんだよ」という暗喩になると思います。それにもしかしたら、家族にとって家族の考え方が変わるスイッチになるんじゃないでしょうか。
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- ガジュマルから始めてみる
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子どもが育てるのであれば、ガジュマルが育てやすいですし、新芽などの変化があるのでおすすめです。沖縄では精霊が宿ると言われていますし、一つひとつ表情が異なるので、好きになりやすい。大人が勝手に、花が咲いた方がいいとか‥‥トマトを育てて食べてみようとか。それもいいんですけど、そればかりに偏ると、役に立つことばかりを教えることになるんです。
人間にも植物にも快適な環境を
観葉植物の多くは亜熱帯性植物です。この植物は人間が快適と感じる環境と、数値的にはほとんど重なるんです。温度は20度から25度ぐらいが最適で、30度に迫れば成長は止まります。湿度は50%前後で、風が緩やかに抜けていく。僕らが想像する「一年中こうだったらいいのに」という環境ですね。だから、家族にとっての環境を良くしていくと、人間としても活性が上がるし、結果的に植物にもいい。ぜひ、快適な住まいで100年生きるように観葉植物を育ててみてください。
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profile
- 川原 伸晃さん
- 園芸家、華道家、REN Founder、ボタニカルディレクター、欧州国際認定フローリスト、創業1919年園芸店四代目、プランツケア®提唱、東京生まれ。18歳の時、オランダ人マスターフローリスト、レン・オークメード氏に師事。2005年、東京生花株式会社へ入社、観葉植物専門店「REN」を立ち上げチーフデザイナーを務める。2011年、花卉園芸界のデザイナーとして史上初めてグッドデザイン賞を受賞。「REN」開業時から植物との持続可能な暮らしのサポートを掲げ、購入した植物のアフターケアに取り組んでいる。
関連サイト
観葉植物専門店「REN」のブランドサイト