interview
シンプルに日常を楽しむ
北欧フィンランドの暮らし
ライター・フィンランド大使館職員
堀内 都喜子さん
4年連続、幸福度ランキング
世界1位のフィンランド。
その暮らしのスタイルについて
「フィンランド人はなぜ
午後4時に仕事が終わるのか」の
著者の堀内さんにインタビューした
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- ゆとりを感じました
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フィンランド人の友人がいて、なんとなく行ってみようと‥‥。20歳のころ、もう20年前ですね。夏の白夜の美しい季節でした。とにかく、ゆったりとしているんです。こんなに、ゆったりとしているのに、経済は発展している。このゆとりは、どこから生まれているのかと不思議に感じました。
夕方には、仕事を終えます
友人の自宅に泊っていたんですが、夕方に帰ってきて「バーベキューしよう!」と言われ、平日なのにと驚きました。でも、それはフィンランド人には日常のこと。留学中に知り合った友人は「父は、銀行員で家に帰ってくるのはいつも18時くらい。あんなワーカホリックみたいな人とは、結婚したくない!」と言っていて、驚かされたことがありました(笑)。
フィンランドに染まりました
初めての旅から日本に帰ってからも、森も湖も近くにあって豊かに生きるフィンランドへの憧れが増して、フィンランドのユヴァスキュラ大学へ留学。2年間の予定が、居心地がよくて5年も暮らすことになりました。帰国後は、フィンランド系企業で働いて、その後はフィンランド大使館に勤務して、フィンランドを紹介する本を書く‥‥すっかりフィンランドに染まりました。
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- 暮らしがシンプルです
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フィンランド人は、働き方も暮らし方もシンプルです。朝起きて、さっと簡単な食事をして出勤。思い思いの時間に出社して、ランチをさっと食べて、残業はせずに仕事を終えます。家に帰ってからは、子どもと遊んだり、趣味やスポーツを楽しみます。食事は、シンプルすぎると感じるくらいです。1日一回温かいものを食べればいいという考えの人が多いですね。ワンプレートに盛りつけることが多くて、片づけもラクです。
おもてなしはコーヒーで
食事に友人を誘うことはほとんどなくて「コーヒーを飲みにおいでよ」と誘われることが多いんです。コーヒーの横に、手作りのお菓子があったりして、人と人が会うことが日常になっています。ごちそうを用意しようとすると、大きな仕事。でも、コーヒーであれば、気軽に友人との時間を楽しめます。そうやって、日常をシンプルに楽しんでいるんですね。
家のなかは、すっきりと
家のなかは、必要最低限の家具が置かれていて、モノが出ていなくて、ミニマルですっきりしています。そして、暖かくて、トイレのなかまで暖かい。冷蔵庫やオーブンなどの家電はビルトインで、ゴミ箱はシンクの下と、でっぱりがありません。冬が長くて、家にいる時間が長いので「いかに家で快適に過ごせるか」を考えてきた結果です。
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- デザインは、シンプルで機能的
- フィンランドのデザインは、シンプルで自然にヒントを得ているモノが多いです。湖や森、木になど‥‥。日本人が受け入れやすいデザインだと思います。そして、大きな特徴として、デザインが機能的です。機能があってこそのデザインです。
厳しい自然と共に生きてきて
冬が暗くて長くて寒くて、夏は白夜が続きます。その変化に合わせて暮らしていく。厳しい自然と共に生きてきて、心地よく暮らしていくかを突き詰めてきて、デザインがシンプルで機能的になりました。そして、機能を突き詰めてきたからこそ、時代にとらわれない美しさがあります。
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- 日常に幸せを感じる暮らし
- 冬は日照時間が3時間だったりして、それは衝撃でした。「太陽はどんな形をしていたかな」と思うくらい暗い日が続いて‥‥。でも、だからこそ、夏の日射しに幸せを感じます。マイナス20度でも、家のなかで暖炉の火を見て、それだけで充分に満足したりと‥‥、日常に幸せを感じています。
電気や水道がないコテージ
フィンランド人の10人に1人くらいは、コテージを持っていて、住宅から小屋のようなものまで、さまざまです。必ず、サウナはあるんです。コテージは「サウナから作る」と言われていますからね。わざわざ電気や水道がないコテージを作る人も多くて、陽の光で起きて自然のなかで過ごすんです。デジタルな社会から離れて、心身ともにリセットしています。
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- 日本で、広々とした青空を楽しむ
- フィンランドでは、気軽に森に散歩に行ったり、湖畔で本を読んだり、自然を楽しみました。日本でも自然を感じたくて、公園で本を読んだり、あおむけになって広々とした青空を楽しんだりしています。見えるすべてが青空というのは、とても、気持ちいいものです。
自分の心の声に素直に
フィンランド人は、仕事にしても家庭にしても趣味にしても学びにしても、すべて貪欲です。それも、ゆとりを持ちながら、自分の価値観で生きています。自分の心の声に素直になって生きていて、自分で考えて答えを出していく。その自由さに驚くことがあります。フィンランドに長く関わってきて「それが幸せの近道なのだ」と気づかされました。
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profile
- 堀内 都喜子さん
- ライター・フィンランド大使館職員。長野県生まれ。大学卒業後、日本語教師などを経てフィンランドのユヴァスキュラ大学大学院に留学。コミュニケーションを専攻し修士号取得。帰国後はフィンランド系企業に勤務する一方、ライター、通訳としても活動。2013年よりフィンランド大使館で広報として携わる。著書に「フィンランド 豊かさのメソッド」(集英社)「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」(ポプラ社)がある。
関連サイト
フィンランド大使館