interview
食べられる庭、
初夏は梅の実を愉しむ
料理家
中川 たまさん
自宅の庭でハーブや柑橘、野菜、
薬味野菜を育てている中川さんに、
「食べられる庭」の魅力について
梅の実の愉しみ方を中心に、
インタビューしてきた
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- 食べられる庭です
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この家で春を迎えるのは、5度目ですね。ここに引っ越してきてから、ちょっとあったらうれしいもの‥‥ハーブや柑橘、野菜、薬味野菜を育てています。私は花には興味がないので、食べられるものしか育ててないですね(笑)。以前は、ハーブを買ってきても使いきれなかったり、すぐにしおれてしまったり‥‥。今は、使いたいときに、ほしいぶんだけ摘んでくればいいので便利ですね。それに、採れたてのハーブは香りが強いので、料理をおいしくしてくれています。
はじめて柑橘を植えました
「最近は糖度が高い果物がいい」という風潮がありますけど、私は昔ながらの酸味や苦味が好きで、甘夏や湘南ゴールド、レモンを植えました。柑橘は自然任せでよくていいですね。晴れの日が続くと水やりはしますけど、基本的にはほったらかしでも、よく育ちます。自分で育てた果実は、実はもちろん、皮も食べています。みかんの皮をピールにしたり、ピクルスにしてみたり‥‥無農薬なので安心ですし。
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- 庭には、大きな梅の木
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戸建てが好きで、逗子では5軒のお家に住みましたが、3軒は梅の木がありました。今のお家にも庭のほぼ真ん中に、大きな梅の木が立っています。逗子は、梅の木が育ちやすいのかもしれません。梅の木は、冬の終わりから芽吹き、ピンクのつぼみがふくらんできます。春には花が咲き、初夏にはたくさんの実ができて愉しませてくれますね。
梅の花のシロップをつくってみたら
ある日のことですが、春一番の強風で梅の小枝が折れて落ちていました。その小枝についていたつぼみのにおいをかいでみると、桜の花のようなバラの花のような、少しエキゾチックな香りがしました。そこで花が咲いたときに、ひとつかみの梅の花を摘み、シロップ液に漬けてみたんです。そうしたら、またたくまに梅の花の香りがシロップに移り、上品なデザートに使えるシロップができあがりました。
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- 初夏には、家族で梅仕事です
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毎年、20キロほど梅の実ができるんです。ダイニングテーブルが、梅の実が入った籠でいっぱいになりますね。家族みんなで、梅の実を採って、洗って、なり口を取ったりして、梅仕事を楽しんでいます。娘が幼稚園生のころは、木に登って揺らして、梅の実を落として喜んでいましたね。梅の実は友だちやご近所の方に差し上げて、季節の恵みが広がっています。
梅の実はいろいろ愉しめます
梅酒以外にも、青梅の塩漬け、青梅のみそ漬け、完熟梅のジャム、青梅シロップなど、梅の実はいろいろと愉しめます。私は、調味料として使いたいので、梅干しではなく、漬ける派です。漬けるだけでも日持ちはしますし、時間がおいしくしてくれます。たとえば、小梅の塩漬けは時間が経つととろりとして、ペースト的にも使えて便利です。青梅のみそ漬けは、梅エキスがしみ出しているので、お肉をつけたり、ドレッシングにできたりと万能です。
完熟梅のジャムもおすすめです
たくさん梅の実が採れたときは、冷凍しておいて、余裕のあるときにジャムにするのもいいですね。冷凍庫から出した梅を1~2週間ほど追熟させると芳醇な香りが出てきます。そうして黄色くなって完熟した梅の実は、えぐみが少なく、やわらかいのでジャムにするのがおすすめです。そのジャムを炭酸水で割ると、その酸味が心と身体をリフレッシュしてくれます。作り方は簡単ですよ。
梅の実は夏バテ対策に
梅の実は疲労回復や夏バテにもいいので、完熟梅のジャムの炭酸水割りや青梅シロップのドリンクは、我が家の夏の定番ドリンクです。毎年、家族で梅の恵みに感謝しながら飲んでいます。
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- 季節の移ろいを感じる暮らし
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春の庭はしおらしい感じですが、夏はハーブやクローバーが膝上くらいまで生長します。夏の勢いはすごいですね。秋になると、隣の家の紅葉が真っ赤になります。ここは鳥が多くて、今はメジロがよくやってきます。4月になったら、うぐいすがやってきますね。庭を通して季節の移ろいを感じます。もう都会には行けなくなっていて、行ったとしてもすぐに帰りたくなります。
娘も季節を愉しんでいます
娘のお手伝いは、買い物ではなく、庭でハーブや薬味になる野菜を採ってくること(笑)。揚げ物しているときに、娘にレモンを採ってきてとか、あのハーブをお願いとか。そんな日々なので、娘も食材を通して、季節を愉しんでいると思います。
春は庭仕事にいいですよ
4月から6月は、庭仕事にいい季節です。ハーブやしそ、みょうが、トマトやキュウリを植える季節です。特にハーブなどは、よく育ちます。ハーブや薬味野菜は、料理に彩りがほしいときや、味にアクセントをつけたいときに便利です。最近、人気のアジアン系の料理には、パクチーやディルなどを入れるとおいしくなります。こういったハーブや野菜、薬味野菜を、春に植えれば、夏には夏らしい香りや料理を愉しめます。
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profile
- 中川 たまさん
- 料理家。神奈川県・逗子で、夫と娘と3人暮らし。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て、2008年に独立。地元・逗子を中心にイベントやワークショップを開催。季節の食材を使った、シンプルながらセンスあふれる料理に定評がある。庭のハーブや野菜、果物を使ったレシピも絶品。著書に「季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方(日本文芸社)」、「季節を慈しむ保存食と暮らし方 暦の手仕事 (日本文芸社)」、「いも くり なんきん、ときどきあんこ(文化出版局)」など。
関連サイト
Instagram@tamanakagawa