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トップ - THINK LIFE / ライフスタイルを考える - 脳によりよい休息で在宅ワークを快適に

interview

脳によりよい休息で
在宅ワークを快適に

早稲田大学理工学術院 教授
枝川 義邦さん

脳には、休息が必要。
特にアイデアを生むには
ぼんやりする時間があるといい。
脳神経科学を研究している
枝川さんに、在宅ワークにおける
脳の使い方を教えていただいた

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  • 脳が疲れていませんか?
    脳のなかには疲れやすい場所があって、大きくいうと前頭葉ですね。そのなかのメインプレーヤーが前頭前野です。おでこの後ろにあります。社会性、コミュニケ―ション、感情のコントロールなどは、ここの働きが大きいと考えられています。パソコンやスマホを使いながら在宅ワークをしていると、この前頭前野を駆使しているので、脳が疲れてしまいます。

    脳のなかの作業台が山積みに
    前頭前野は、一次的に記憶をするワーキングメモリーの働きも担っています。イメージとしては、記憶の作業台ですね。大量の情報や複雑な情報が入ってくると、そこに書類が山積みで散らかっている状態になります。だから、処理ができなかったり、ミスをしたりしてしまいます。

    最近、イライラしていませんか?
    休憩中にもスマホを操作している方はいませんか?特にスマホゲームは、色が多くて動きがあって音もある。情報量が多くて、脳への負荷が高い。在宅ワークで、脳が疲れていて作業台が散らかっているのに、さらに情報を入れ続けようとしているんです。そうなると前頭前野の働きが低下して、イライラしたり、怒りっぽくなったり、もの忘れが多くなります。
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  • 脳過労は、スマホが原因?
    「ここ10年で、先ほどの症状の方が増えてきた」といわれています。日本にスマホが発売されたのが2008年で、本格的に使い始めたのが2011年前後ですね。直接的な因果関係があるとはいえませんが「スマホが登場したことで脳過労の悪化が加速している」と推測されているのです。

    スマホと一心同体の生活に
    スマホは、いつでもどこでも気軽に使えることは利点のひとつです。朝起きてメールチェックして、ニュースを見て、SNSに「いいね」を押して、支度中もチラチラ見たりして‥‥最近は防水タイプが発売されていてお風呂のなかでも操作できてしまう。もう起きている時間は、スマホと一心同体だという人もいるでしょう。しかし、これでは脳は休むことができません。

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  • ぼんやりする時間が必要です
    脳を休ませていると感じている場面では、デフォルトモードネットワーク(以下はDMN)の働きが高まっています。たとえば「特に頭を使っていないなー」というぼんやりしている時間です。眠っている時間もそうですね。シャワーを浴びているときやドライヤーで髪を乾かしているような行動が自動化している時間もDMNが働いています。

    1時間に一度くらいは脳に休息を
    短い時間でもいいので、1時間に一度くらいはパソコンやスマホから離れてください。窓の外の緑を見たり、空を眺めたりして、ぼんやりするのがお勧めです。葉っぱのゆらぐ音などは、DMNのスイッチを入れやすい‥‥。マインドフルネス的な感覚で、深い呼吸をするのもいい。スマホを持たずに散歩するのは、とてもいいですね。そうするとDMNの働きが高まりやすく、脳の疲労回復を促進し、脳のなかの作業台が片づいた状態になります。

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    撮影:ミサワホーム「Green Infrastructure Model(グリーン・インフラストラクチャー・モデル)」 ミサワパーク東京(東京都杉並区高井戸)

  • ひらめきが生まれやすい
    DMNの働きには、他にもよいことがあって、ひらめきが生まれやすいと考えられています。かつて中国の詩人・欧陽脩が、アイデアが生まれやすい場所は「馬上・枕上・厠上」といったそうです。今でいうと「電車のなか、ベッドのなか、トイレのなか」ですね。昔は、そこではなにもすることないので、ぼんやりして、すてきな詩が生まれたのでしょう。

    脳のなかのこびとさんは、DMN でした
    DMNは、記憶を編集して整理してくれます。眠っているときは特に働いてくれていて‥‥。お仕事でもレポートでも煮詰まるまで考えて「えいっ」と寝てしまって、起きるとアイデアが生まれたりします。昔は「こびとさんが出てきて、夜中に宿題やってくれた」と冗談でいっていましたが、どうやらその脳のなかのこびとさんはDMNなんですね(笑)。

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  • 働く場所を変えて、脳を活性化
    脳のなかのドーパミンという物質が情報を伝えて、やる気が出たりしますが、このドーパミンの神経は、飽きやすい。同じ環境から同じ刺激ばかり受けていると、ドーパミンの分泌量が下がりやすいのです。身体の向きを変えて、視界を変えるだけでもいい。アイデアを出すときは外が見える場所へ移動するのもいいですね。脳が活性化すると、やる気が出ます。

    適度な緊張感で集中を
    誰かに見られているという視線を感じると、緊張感が生まれます。適度な緊張では脳の覚醒度が上って、集中しやすくなります。このオフィス空間のように、グリーンが多くて顔が見えないと、ほどよい緊張感があり、ちょうどいいですね。そういう意味では「集中したい」と思ったら、家族の気配を感じるリビングで仕事をするのもいい。でも、そればかりだと疲れてしまうので、ひとりの部屋があるのもいいですね。

    在宅空間は、クリーン&グリーンに
    在宅空間のキーワードは、クリーン&グリーンです。衛生状態が保たれていることは生き物として必要です。そして、きれいに片づいている空間は脳への負荷を和らげます。そして、グリーンがあるといいですね。虫がつくのが嫌な人は、フェイクグリーンでもいい。緑視率が10~15%で生産性が高まることが知られています。また、ストレスや疲労感の緩和も期待できます。在宅ワークは、デジタル機器を使うことが前提です。ぜひ、脳にやさしい環境で、脳にやさしい働き方をお勧めします。
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profile

枝川 義邦さん写真
枝川 義邦さん
早稲田大学 理工学術院 教授/東京大学大学院修了にて薬学の博士号、早稲田大学ビジネススクール修了にてMBAを授与された後、早稲田大学スーパーテクノロジーオフィサー(STO)の初代認定を受ける。研究分野は、脳神経科学、人材・組織マネジメント、マーケティングなど。一般向けの著書には、「『脳が若い人』と『脳が老ける人』の習慣」(アスカビジネス)、「記憶のスイッチ、はいってますか~気ままな脳の生存戦略」(技術評論社)など。2015年度早稲田大学ティーチングアワード総長賞、2017年度ユーキャン新語・流行語大賞を「睡眠負債」にて受賞。

information

「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣
脳年齢が若ければ記憶力、集中力、発想力、思考力、判断力などが、発揮できる。若い脳を保つために普段の生活のなかで「やったほうがいい習慣」と「やらない方がいい習慣」を対比しながら45項目で紹介。アスカビジネス(2015年発売)