トップ - HomeClub特集 / ライフスタイルを考える / 住まいのイメージをふくらませる - 家事と子育てを両立する工夫がいっぱい「キッチンは幸せをつくる場所ですね」
2021.05.11
がんばりすぎずにつくる素敵なごはん。そんなレシピが多くのファンに支持されている料理研究家、近藤幸子さん。愛用のキッチンは、5年ほど前に自宅をリフォームした際に、セミオーダーでつくったもの。コンロと作業台、シンクが一列に並ぶI型のキッチンに、自分の好みのサイズでつくった作業台を組み合わせて使っている。
「私にとってキッチンは、家族の食事をつくる場所であり、仕事場でもあり、料理教室を開く際には生徒さんに夢を持ってもらう場所でもあります。こうしてメディアに紹介していただくこともあるので、いつも素敵でありながら、常に使いやすい状態で、自分に負担の少ない場所であることを心がけています」
一日の大半をキッチンで過ごすという近藤さん。居心地のよさも、キッチンの大切な要素の一つだ。
「意識しているのは、自分のお気に入りのモノしか置かないということ。色や素材などのテイストが好みに合っているかどうかも大切ですね。すごく使いやすい調理器具でも、デザインが好みでなければ購入しません。使いやすいことは絶対条件ですが、そのうえで自分の好きなテイストに囲まれていることが安らぎや居心地のよさにつながるので、キッチンに置くモノは厳選しています」
現在、2人のお子さまを子育て中の近藤さん。キッチンから連続しているリビングには、子育てと家事を両立する工夫を盛り込んだ収納が置かれている。たとえば小さな引き出しがたくさんあるデザインもその一つ。引き出しには、ハンカチや文房具など、学校へ行くお子さんの朝の支度に必要なものが収められている。
「収納はキッチンからすぐに手が届く場所にありますから、朝食の支度をしながら、子どもの世話ができます。小さな引き出しは、1つの引き出しに1種類のモノをしまうことを考えたデザインです。サッと投げ入れるだけで片付きますし、引き出しのなかでモノを探すこともありません。忙しい朝にはとても便利ですね」
キッチンと収納は、最短の家事動線でつながっている。家事動線は、近藤さんが大切にしている工夫でもある。キッチンの向かい側にも、作業台を挟んで収納が設置されており、作業台の周囲を回遊できる行き止まりのない家事動線になっている。
「子どもがいる環境では、家事を楽しむよりも、毎日をどれだけ軽い負担で回していくかということが重要になります。それをがんばりすぎることなく、快適にできることが大切で、たとえば、徹底的にキレイな状態を目指しすぎると、その状態を維持することが家族みんなの負担になることもあります。このくらいまでなら許せるかなという美しさのバランスを探ることも、私が大切にしていることの一つです」
飾らない雰囲気のキッチンは、いつまでもくつろいでいたくなる心地よさ。実際、初めて訪れた人でも、ついつい長居してしまうことが少なくないそうだ。
「お気に入りのモノだけに囲まれたキッチンは、居心地がよいだけでなく、一日をがんばろうという気力も与えてくれます」
料理は毎日を生きるために必要なルーティンワーク。けれど、一番手軽に楽しめる娯楽でもあると語る近藤さん。
「何もなくて、どこにも行けなくても、おいしいものをつくって食べたら、それだけで幸せを感じられます。自分の食べたいものを自分でつくることは、たくましく生きるためにも大切。そのためにも、キッチンは使いやすく、心地よい場所であるべきだと思います」
料理をしなくても、ここに立つと幸せを感じるという近藤さん。キッチンは、家族の幸せをつくる場所でもある。
近藤幸子 (こんどう・さちこ) 料理研究家 管理栄養士
料理教室「おいしい週末」を主宰。2児の母。『調味料ひとつでラクうまごはん』(PHP研究所)など著書多数。最新刊は『「さ・し・す・せ・そ」だけでできる黄金比レシピ』(ワン・パブリッシング)。