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女性を主役に据えた華やかなドラマにも定評のあるフランソワ・オゾン監督の最新作。ストライキ中に倒れた夫の代わりに、雨傘工場の経営を任された主人公の主婦・スザンヌとその家族を描いた物語。彼女が工場で新作の傘を披露される場面は、まさに『シェルブールの雨傘』へのオマージュ。色とりどりの傘が美しい。
2011年1月8日(土)より、TOHOシネマズシャンテ、新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
監督:フランソワ・オゾン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデューほか
主演はフランスの大女優、カトリーヌ・ドヌーヴ。邦題は『しあわせの雨傘』といえば、ドヌーヴの若き日の傑作『シェルブールの雨傘』を思い浮かべる人も多いだろう。ドヌーヴ演じる主人公の奇跡のような可愛さ、ミシェル・ルグランの楽曲、ポップな色彩のインテリアやファッション…『シェルブールの雨傘』の華やかな魅力が、この『しあわせの雨傘』を観ていると思い出される。
たとえば、大きな花模様の壁紙のキッチンで、ドヌーヴ演じる主人公のスザンヌが朝ごはんの片づけをしている場面。往年のヒット曲を流しながら、それに合わせて歌い踊るドヌーヴの姿には、夢のような華やかさがある。社長婦人である彼女の邸宅には、そんな華やかさが所々に散りばめられている。部屋数が多く、様々なシーンで趣の異なるインテリアが楽しめる。
原題は、〝Potiche〟これは、よく暖炉の上などに飾られている、綺麗だが、あまり実用性のない飾り用の壺のこと。社長婦人として常に夫の隣で生きてきたスザンヌのことを、彼女の娘はPoticheだという。「ママのようにはなりたくないわ」と…。
しかし、そんな彼女が夫のピンチに際し、夫に代わって工場の指揮をとることに。それまでは裏方として家族を見守ってきた彼女の度量とたくましさが徐々に表にあらわれ、夫である社長との間に激しい対立を起こしていた工員の心をも魅了していく。
『シェルブール…』の頃の初々しい可愛らしさとはまた違った、年齢を重ねたドヌーヴの魅力。大人の女性ならではの深い愛情とユーモアが、この映画を豊かにしている。世界中のすべての女性が秘かに持っているそんな魅力に、フランソワ・オゾン監督の敬意が注ぎこまれた、新年にぴったりの華やかな楽しさに溢れた作品。
文◎多賀谷浩子(映画ライター)
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