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1996年の『秘密と嘘』がカンヌ映画祭のパルムドール(最高)賞に輝き、世界に知られるようになったイギリスの名匠、マイク・リーの最新作。一組の夫婦と周囲の人々の1年をごく日常の会話の中に描き出す。夫婦の家の庭はもちろん、キッチンのインテリアも素敵で、日々の生活の場が細やかに描かれているところも魅力の作品。
『家族の庭』
監督:マイク・リー
出演:ジム・ブロードベント、ルース・シーン、レスリー・マンヴィルほか
『家族の庭』
DVD 4,179 円(税込) 発売中
発売元:ツイン / 販売元:パラマウント ジャパン
晴れた日の昼下がり、自宅の庭にテーブルを出して、友人たちを迎え、食事とワインを楽しむ。そんなシチュエーションに憧れる人も多いのではないでしょうか。
映画『家族の庭』の夫婦、その名もトム&ジェリーの家は、まさにそんな風情。二人の庭には多くの友人たちが集まります。
互いに打ち込める仕事を持ち、休日には野菜を育て、充実した日々を送るトム&ジェリー。独立した30歳になる息子との関係も良好。そんな夫婦とは対照的に、二人のもとには人生にちょっと不器用な友人たちも集まります。孤独を持てあますメアリーもそのひとり。せっかく夫婦の家にやってきても、彼女はお酒を飲みながら、自分の男運のなさを嘆くばかり。そんな彼女を二人はいつもどおりの距離感で受け止め続けます。原題は「アナザー・イヤー」。トーンの異なる映像で春・夏・秋・冬の4つのパートに分かれ、夫妻と周囲の人々の1年が、人生の季節を象徴するように描かれていきます。
監督はイギリスの名匠マイク・リー。ナレーションも音楽もつけないこの監督の作品は、登場人物の会話だけで物語を見せてしまいます。一人ひとりの登場人物が多面的に描かれていて、人物どうしのやりとりに、私たちが日々味わう微妙な機微や関係性が豊かに表れる。イギリスらしいシニカルさが感じられるのと同時に、国境を越えて共通する人間関係の妙、私たちをとりまく世界がこの1本に集約されていて、終始飽きさせません。細部までリアルな日常描写は俳優どうしの即興をもとに映画を組み立てていくリー監督独自のやり方ゆえのもの。ドラマチックな誰かの人生ではなく、どこにでもある日常の悲喜こもごもの中に私たちの人生を描き出す。マイク・リー監督作の魅力が詰まった1本です。
文◎多賀谷浩子(映画ライター)
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